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増加する認知症

厚生労働省の推計によると、2025年の65歳以上の認知症患者数は675万人~730万人。高齢者人口の5人に1人の割合です。
前段階である軽度認知障害(MCI)もほぼ同数近いとみていることから、
両方を合わせると実に4人に1人が認知機能になんらかの障害を持っている計算になります。
推計最終年2060年の予測数は850万人~1154万人となっており、劇的な効果のある治療法が開発されない限り増加の一途をたどります。

もっともなりたくない病気1位

2020年に(一社)日本認知症予防学会が実施した調査では、一般の48%、医師・メディカルスタッフの35%がもっともなりたくない病気として認知症をあげました。どちらもがんを上回っての1位。この他に大手生保や金融機関系のシンクタンクが実施した調査においても同様の結果が出ています。
認知症の正確な情報以前に、その症状に対する印象が強いことの裏返しではないかと思われます。

認知症は症状の名称、原因病は様々に存在

認知症は病名ではありません。認知機能の障害によりおこる様々な症状を指しています。原因は数十種類以上あると言われています。
中でもアルツハイマー病は日本でも世界でも最も多い認知症の原因病で50%~70%を占めています。
アルツハイマー病はアミロイドベータたん白質(=Aβ)が蓄積されて周囲の脳神経細胞が死滅してしまう病気です。
このように記憶が障害されておこる中核症状(記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害)、周辺症状(徘徊、暴言暴力、幻覚など)が認知症であり、一旦発症すると治療は不可能とされています。

加齢が最大のリスク、誰もがなる可能性を持つ

平均寿命がここまで長くない時代は、認知症になる前に寿命がくる人がほとんどでした。
2021年の平均寿命は男性81.47歳女性87.57歳。加齢が進むほど発症リスクも増大するので「誰もがなる可能性がある」と言われます。
前述のAβは発症の15年~20年前から蓄積が始まるとされており、仮に70歳で発症したのであれば50歳からその蓄積が始まっていた可能性があります。
また脳の障害(脳梗塞、頭部外傷など)も血管性認知症の原因になります。屋内外での転倒なども実はとても危険なことなのです。

認知症の治療法は確立されていない

認知症は脳神経細胞の死滅にともなう症状なので、根本的な治療が難しい病です。
現在あるのは進行を遅らせる薬としてアリセプトなど数点です。
しかし軽度認知障害(MCI)の段階であれば程度と原因によっては適切な治療により健康な状態に回復する可能性もあるそうです。
昨年アメリカで「アデュカヌマブ」という治療薬が条件付きで承認されて話題となりましたが、日本や欧州での承認は見送られました。

現在同じ企業グループが「レカネマブ」という薬で軽度認知障害、早期の認知症薬として2022年度中の申請を目指しています。

もの忘れなど違和感を覚えたら早期に受診を

早期に受診をというのは前述した回復の可能性のためです。
認知症は進行をともなうので、受診、治療が早ければ早いほど回復可能性が高まりますし、進行を遅らせることも可能です。
ちょっと様子を見てみようの間にも進行してしまうかも知れません。お早目の受診をおすすめします。
かかりつけ医がいれば、まずはそちらにご相談されてもいいですし、なければお住いの自治体の地域包括支援センターに相談しましょう。
地域のもの忘れ外来などを紹介してくれます。